日本の伝統的な花嫁衣装は、その独自の優雅さが際立っています。
この記事では、そんな装束に不可欠なアイテム「筥迫」にスポットを当て、その起源や意味、中身、そして花嫁の小物としての象徴的な役割を詳しく解説します。
筥迫(はこせこ)とは
筥迫は、現代でいうアクセサリーケースに該当します。
かつては女性が正式な場において必ず携帯していたアイテムで、装飾的な機能も果たしていました。
そのため、花嫁も結婚式で筥迫を持つようになったのです。
花嫁が筥迫を持つことの意義は、夫に対する忠誠と自らの誇り、決意を表しています。
現在、筥迫は結婚の象徴として、またフォーマルな場のアクセサリーとして欠かせないものとされています。
筥迫の起源とその歴史
筥迫は、もともと「紙挟み(かみはさみ)」として知られ、和歌や俳句の草稿を収める「懐中詠草入れ」として使用されていました。
江戸時代後期の喜多村信節の随筆「嬉遊笑覧」によれば、筥迫は「箱狭子」と呼ばれる細長い箱形のアイテムでした。
当時、筥迫は大奥や武家の女性たちが持つ特権的なアイテムであり、格式高い装いに欠かせない雅の象徴とされていました。また、このアクセサリーは持つ女性の社会的地位や富を象徴する役割も果たし、「チラ見せアクセサリー」として他人に見せることもありました。
筥迫は吉祥模様や能楽、中国文化をモチーフにした豪華な刺繍や希少な布地を用いたものが競われるほどで、その製造を専門とする職人や専門店も登場しました。やがて、このブームは武家の女性から江戸の一般女性にまで広がり、裕福な町人女性も持つようになりました。
明治時代に入ると西洋文化の影響で「バッグ」という新しいアイテムが登場し、筥迫はさらに装飾的な意味合いを強め、サイズが小さくなっていきました。これにより、筥迫は実用品から装飾品へと変化し、その文化は現代に至るまで受け継がれています。
現在では、花嫁の衣装だけでなく、七五三などの和装にも装飾品として取り入れられており、その使用は多岐にわたっています。
筥迫の内容と用途
筥迫は、本来「化粧ポーチ」に相当するものです。
現代の花嫁衣装に添付される筥迫には具体的な内容物は入っていないことが多いですが、江戸時代には女性の身だしなみを整えるための用具が収められていました。主なアイテムには以下が含まれます:
- 鏡
- 白粉(おしろい)
- 紅板(口紅)
- 紅筆
- 櫛
これに加えて、以下のようなものも入れられることがありました:
- お守り
- お金
- 懐紙
- お香
「これだけのアイテムをどうやって小さな筥迫に収めるのだろう?」と思われるかもしれませんが、江戸時代の筥迫は現代よりも実用的で大きめのサイズでした。明治時代に入ると、筥迫は装飾的な意味合いを増し、サイズが小さくなりました。
花嫁以外の筥迫の使用
七五三
七五三では、女児の和装アクセサリーとして筥迫が用いられます。化粧品は不要ですが、装飾品として取り入れられるのが一般的です。
振袖と筥迫
結婚式に振袖で出席する際も筥迫が使用されます。花嫁を際立たせるため、控えめなデザインが選ばれがちです。成人式で筥迫を持つこともあります。
日常使用
特別な機会だけでなく、日常使いの筥迫もあります。カジュアルな着物スタイルに合わせてシンプルなデザインの筥迫を使用する人もいます。「筥迫様小物入れ」として製作される和装小物も人気です。
まとめ
筥迫(はこせこ)は、花嫁の和装小物として象徴的な存在であり、女性としての誇りや決意を表しています。江戸時代から現代にかけて、化粧ポーチから装飾品へと進化しました。現在では、結婚式のゲスト、七五三、成人式など、さまざまなフォーマルな場で使用されています。結婚式で筥迫を選ぶ際は衣装に合わせて慎重に選び、必要に応じてコーディネーターに相談すると良いでしょう。